「ありがとう。お土産も持ってきているの、良かったらお茶の時にでも出してもらえるかしら」

「ありがとうございます。これは人気店のお菓子ですね。中々手に入らないと聞きますので奥様も喜びます。先にご案内させて頂きます。こちらへどうぞ」

 通してもらった応接室にいたマルガレーテは前回再会した時と変わらぬ美貌であるものの、目に見えて疲れが出ているみたい。これは結構重症ね。
 
 私に気付いた時は嬉しそうにしているのが分かるのだけれど、やっぱり無理して笑ってる感が凄い伝わる。
 
「久しぶりね、マルガレーテ。元気…… ではなさそうね。手紙を読んだ時には思っていたけど」

「来てくれてありがとう、アニエス。重い内容の手紙でごめんなさいね。もうアニエスにしか相談できない内容なの」

「マルガレーテ、安心して頂戴。このアニエスさんがパパっと解決しちゃうわよ」

「フフッ、そういうノリの軽い所は学生時代と変わらないわね。なんか安心しちゃった」

 子供達には厳格なTHE・貴族を演じているけれども、実は学生時代は困った時のアニエスさんとして色んな人たちの相談に載ってたのよね。
 
 うん、我ながら変わり身の早さは自分でもようやるわと思う。そしてメリッサが『この人本当に奥様なの?本物かしら?』という驚愕の表情を向けている。
 
 ごめんね、メリッサ。後でちゃんと説明するから、子供達には黙っておいて欲しいの……。
 
「もう面倒だから学生時代のノリで言っちゃうけど、娘さん…… クララちゃんと何があったかを聞く前に娘を領に置き去りにしたまま王都にどのくらい滞在してるの?」

「半年ほどになるわ……」

「アンタねえ、まだまだ親に甘えたい年頃の娘と半年も離れて暮らしておくなんて内容によってはいくらアンタでも許さないわよ」

「わ、わかってるの。でも、どうしてもあの時の恐怖が…… 娘が怖くて仕方ないの」

 マルガレーテは本気で怯えている。どうやらその点を解消しないと根本的な解決にならない事は分かった。
 
「怖いって何があったの? まずはそこが分からないと解決の糸口すら見つからないわよ」