『知り合い』その言葉にチェスカが反応して怒気を帯びた声でチェインに詰め寄る。
 
「私が知り合いだからってあの子を利用する気じゃないでしょうね。いくらチェインさんでも私がそれに従うと思いますか?」

「言い方が悪かったね。例えば今回のグランドホーンの異常個体出現の様なイレギュラーの際に対応できる人間は限られてるからね。
 そういう事態にチェスカ君経由で依頼を掛ける事をお願いしたいのであって、我々聖王教会の仕事をやらせるつもりはないから安心して。
 それに彼女が対応できないって場合も考慮済みで構わないよ。必ず戦えという話をするつもりも一切ない」

「う、うーん…… まあ、それくらいであれば許容範囲ですかね……」

「よし、交渉成立だね。じゃあ、彼女の情報を教えよう。聞いて驚かないでね」

 チェスカは大体予測はつけている。あの言動や佇まいからすると恐らく良い所の商家もしくは貴族とは予測しているが、貴族の娘があんな最前線で戦うってある?
 
 それに父親が元冒険者と言っていたからやっぱり商家なのかなあ等と予測していた。
 
「彼女の本名はマルグリット・グラヴェロット。グラヴェロット領領主の実の娘だよ。年齢は六歳で合ってる」

 チェスカは口をぽっかーんと開けてしばし放心状態になっていた。
 
 その光景にマルグリットと初めて対峙した時の自分が重なって笑っていた。
 
「クク、いい表情だね。僕がマルグリット嬢と初めて対峙した時もきっとそんな表情だったんだろうね」

 チェインが話しかけて、ようやく現実に戻って来たチェスカは目が左右にキョロキョロ動いていて落ち着きが無くなっていた。
 
「え?え?え? 領主の実の娘? 貴族令嬢? いや、だって…… グランドホーンと真正面から殴り合ってたんですよ? そんな事ってあります? それに父親は元冒険者って聞いてたんですが……あれは嘘?」

「いや、合ってるよ。領主のサミュエル・グラヴェロットは若い頃に冒険者やってたからね。まあ、僕もグランドホーンと殴り合ってるのを見て目玉が飛び出そうになったから、その気持ちはわかるよ。僕も司祭様になんて報告するか悩んでるんだよね」

(マルグリットちゃん…… いや、マルミーヌちゃん…… 次会った時にちゃんと態度隠せるか不安だ……)

「あ、そうだ。話は変わるけど、ルーシィ君は元気にしてる?」