「急に呼び出してしまってすみません。チェインさん」

「いや、問題ないよ。僕も君と話したい事があったんだ。こちらから呼び出す手間が省けたよ、チェスカ君」

「場所はここで大丈夫ですか? ()()に嗅ぎつけられませんか?」
 
「この店はうちの息が掛かっているから大丈夫だよ。もし何かあれば知らせて貰える」

「そうですか…… 早速ですが、私のお願いから聞いてもらっていいですか?」

「構わないよ。多分僕の話したい人物と同じだろうからね」

 チェスカは顔には出さなかったものの、身体が『ピクッ』と跳ねたようだった。
 
(まさか聖王教会もマルミーヌちゃんの事を探っていた……? いや、彼らなら知っていても可笑しくはないか)

「なら話は早いです。常闇の森のグランドホーン異常個体の討伐した人物についての隠蔽をお願いしたいのです。ギルドに手を回してもらえませんか?」

「フフッ、予想通りの話の内容だね。そりゃそうか、いくら説明しようがあの光景は実際に見たもの以外は信じられないもんね」

 やっぱりあの場にいたのかとチェスカは予測していた。心の中で舌打ちをしているとチェインが話を続けた。
 
「チェスカ君はあの人物についてどこまで知ってる?」

 その程度の情報はそちらで既に掴んでいるだろう? 何故そんなことをわざわざ聞くのかと質問の意図が分からなかったため、乗る事にした。

「名前は恐らく偽名ですが、マルミーヌと名乗っていました。年齢は偽りがなければ六歳のはず。戦闘能力は御覧の通りですよ」

「なるほどね…… もし、あの子の正体を知っていると言ったらどうする?」

 チェスカの心臓が高鳴っていく。それはチェスカが喉から手が出る程欲しい情報だった。
 
 代償についても理解している。『裏の仕事』だ。
 
 だが、二度も命を救ってもらった恩人を自分の手の届く範囲で守る事を決めたチェスカに迷いはなかった。

「教えてください。仕事もやりますから」

 チェインは既にこの答えも予想通り過ぎて笑ってしまったが、その態度にチェスカが苛ついているのが分かったから、拗ねる前に真面目に話をすることにした。
 
「ごめんごめん、仕事は正直に言うと無しでも構わないよ。何しろ、君が彼女と知り合いという事が大きいからね」