マルグリット達は置いて来てしまった少年の元へたどり着くと未だに気絶していた。
 
 寝息を立てている…… これは気絶というよりもはや睡眠である。

「少年は気持ちよさそうに爆睡してないか? 全くマルミーヌちゃんが必死になって戦ってのに、誰のせいだと思ってるんだか」

 ルーシィは少年の上半身を起こして、パチパチと頬を何度か叩いて起こしている。
 
 少年は口ぽっかり開けて、涎を垂らしながらゆっくりを目を開く。
 
「んあ? あれ…… ここは? なんで僕寝てるの?」

 どうやらまだ事態が飲み込めていないようだった。少年が辺りを見渡すと一人少女が追加されていることに気付いた。
 
 少年は少女を見てポケ―っとしている。一目惚れとかではなく、どこかで見たような気がしていたからだ。
 
 少し少年の時が止まったと思った直後、少年が『あーっ!!』と何かに気付いた様に声を荒げた。
 
「お姉ちゃんを助けてくれたあの時のおきぞ……ムググッ」

 言葉の続きが『お貴族』と言われると思ったマルグリットはこの時ばかりは光よりも早い速度で少年の口を手で封じた。
 
 表情全体を見ると微笑んでいるようにも見えるが、目は全く笑っていない表情で少年だけに聞こえる様に呟く
 
「この二人は私が貴族である事を知りません。余計な事は言わない様に…… 私の事は『マルミーヌお姉ちゃん』とでも呼んでください。いいですね?」

 ほぼ脅しの様なマルグリットのお願いに少年はグランドホーン以上の命の危険を感じたため、高速で頷く事しかできなかった。
 
 ルーシィとチェスカは二人の会話は聞こえなかったものの、後ろから見ていて何か釘刺してるなと感じ取っていた。
 
 基本おバカではあるが、察しの良さだけは一人前のルーシィとチェスカであった。
 
 二人は無言で『余計な事を聞くのはやめよう』とアイコンタクトを送って頷き合っていた。
 
 少年は『そういえば何でここにいるんだっけ?』と当初の目的を忘れかけていたが、ハッと思い出したようだ。
 
「あっ! すっかり忘れてました。めちゃめちゃ大きいグランドホーンはどこに行っちゃったんですか? もしかしてどこか行っちゃいました?」

 どうする? 本当の事を言うべきか? 悩んでいる所にルーシィから招集が掛かる。