だから、二カ月前に自分の夫となった鬼の若殿の伊吹が、全力で自分を慈しみ、寵愛するつもりだと知った時は、戸惑い、どうすればいいのかわからなかった。
しかし真綿で包むように伊吹に溺愛され、他の心優しいあやかしたちとも触れ合ううちに、伊吹の愛情をだんだんと享受できるようになった。
そして次第に、伊吹を想うと凛の全身が温かく、むずがゆいような感覚に陥るようにも。
この感覚が愛なのかどうか、凛はまだよくわかっていない。だけど伊吹がなによりも大切だと断言できる。
かくして、あやかし界にて伊吹の花嫁として暮らすことになった凛。
しかし、表向きは人間と友好な関係を築いているあやかしたちだが、いまだに人間を下等な存在、ましてや食糧だと思い込んでいる者も数多くいる。
だから凛は、人間という正体を隠して暮らさなければならなかった。伊吹の鬼の匂いを凛につけることで、人間の匂いを消して日々を過ごしているのだ。
つまり頬への口づけは、伊吹の匂いを凛へと移すための行為。
しかし凛についた鬼の匂いは一日で消えてしまうため、毎朝必ず行わなければならなかった。
唇同士を重ねれば三日間はもつのだが、凛が最初に尻込みしてしまったため、伊吹がいまだに気遣ってくれているのだった。
だけど、伊吹と共に過ごすようになってしばらくの時が経ち、彼の愛情を素直に嬉しいと感じるようになった今日この頃では、凛は伊吹にもっと触れたいと考えるようになってきていた。
もっとたくさん、深いところまで。
しかし真綿で包むように伊吹に溺愛され、他の心優しいあやかしたちとも触れ合ううちに、伊吹の愛情をだんだんと享受できるようになった。
そして次第に、伊吹を想うと凛の全身が温かく、むずがゆいような感覚に陥るようにも。
この感覚が愛なのかどうか、凛はまだよくわかっていない。だけど伊吹がなによりも大切だと断言できる。
かくして、あやかし界にて伊吹の花嫁として暮らすことになった凛。
しかし、表向きは人間と友好な関係を築いているあやかしたちだが、いまだに人間を下等な存在、ましてや食糧だと思い込んでいる者も数多くいる。
だから凛は、人間という正体を隠して暮らさなければならなかった。伊吹の鬼の匂いを凛につけることで、人間の匂いを消して日々を過ごしているのだ。
つまり頬への口づけは、伊吹の匂いを凛へと移すための行為。
しかし凛についた鬼の匂いは一日で消えてしまうため、毎朝必ず行わなければならなかった。
唇同士を重ねれば三日間はもつのだが、凛が最初に尻込みしてしまったため、伊吹がいまだに気遣ってくれているのだった。
だけど、伊吹と共に過ごすようになってしばらくの時が経ち、彼の愛情を素直に嬉しいと感じるようになった今日この頃では、凛は伊吹にもっと触れたいと考えるようになってきていた。
もっとたくさん、深いところまで。