部屋の外は、惨たらしい光景が広がっていた。
使用人達が捕まり、その場に伏せられている。

「!」

──あれは……。

異母兄弟の遺体が、そこにはあった。

大量の血が流れている。

見るのも耐えられず、思わず顔を逸らしてしまう。
彼らに虐められてきたとはいえ、死んでほしいと思ったことはなかった。

──私も、あんな風になっていたかもしれない……。


外に出ると、冷たい風が吹いていた。

「…………」

初めて見た、外の光景は美しかった。
輝く星と月、その光に照らされている地面。

──綺麗……でも、動物と虫の鳴き声しか(・・)聞こえないわ。

いつも窓越しでしか見たことがない外。
少しの感動に浸るも、屋敷の外の静けさに違和感を感じた。
夜中だから、というのはあるかもしれないが少しくらいは人の声が聞こえてもいいはずだ。

「こっちだ」
「は、はい」

ついていくと、本でしか見たことがない馬がいた。

「馬に乗ったことは?」
「いえ。外に出たことも初めてなので」
「……外に、出たことがないのか?」

文月は静かに頷いた。
あやかしが奇襲してくるまで、文月は部屋の外から出ること自体許されていなかった。

──私にとっては、あれが普通だったけど。他の人達からしたら違うもの。外に出るのが普通よね。

「……そうか」

彼はこちらを見ずに、静かに言った。



男と共に馬に乗り、数時間後にあやかしの国に到着した。想像の何倍も早くついて、酷く驚いた。
これもあやかしの力なのだろうか。

不思議と、人間の国に未練はなかった。
唯一気がかりなのは、使用人たちのことだけだった。

──家族の誰も心配出来ないなんて……。まあ、あの人達に家族だと思われたことなんて、一度もないでしょうけどね。

「ここだ」

目の前には、一条家とは比べ物にならないほど大きな屋敷が建っていた。

あまりの大きさに、文月は目を瞠る。

「来い」
「あ、はい……」

中に入ると、想像以上の広さだった。

「お帰りなさいませ。旦那様」

出迎えたのは、十数人の使用人。

──使用人だけで、何十も……。

広さと人の多さで目が回りそうだ。

「あら。ぼっちゃ……旦那様。そちらのお嬢様は?」

一人の女性が、前出てくる。

目を閉じていて、髪は紺色。歳は、三十代後半だろうか。

「ああ。客人だ。丁重にもてなせ」
「まあ、それはそれは! すぐにお部屋をご用意致します!」

女性はそう言うと、すぐにどこかへ行ってしまった。

「あれはうちに仕えて長い侍女だ。気楽になんでも言っていい」
「え」

流石にそれは出来ない。

人間の国にいた頃と違うと言えど、使用人に何か要求するのは気が引ける。

「わ、私は捕虜(ほりょ)の身ですよね。そんな客人として迎えられるなんて……」

その為に連れて来たのだろうと思い、「客人」というのも偽りだと思っていたが、違うのだろうか。

「捕虜? ああ、言い忘れていたな」
「?」

なにを言い忘れていたのだろうかと、首を傾げる。

「お前を俺の嫁にする」
「は……?」