楽しい会話をしていると、いつの間にやら時間が経ち、夕暮れ時となっていた。
お茶会も終わりを迎え、文月は咲夜子と玉藻のふたりを見送りに行く。
「来てくださりありがとうございました。とても楽しかったです」
「こちらこそありがとう。とても楽しい時間を過ごせたわ」
「本当に楽しかったどす。ありがとうございました」
ふたりを見送り、部屋に戻ろうとしたところ、夜宵が目の前から歩いて来ていた。
「文月」
「や、夜宵さま。どうかなさいましたか?」
「ああ。母上と弧燁は帰ったのか?」
「はい。つい先ほどお帰りになられました」
「良かった。ちょうど、会いに行こうとしていたんだ」
最近は夜宵の顔を見るだけでも、顔が火照るのを感じてしまうのに、『会いに行こうとしていた』と言われると、全身が赤く染まってしまう気がする。
「夕食のあと、俺と一緒に外を少し歩かないか?」
「は、はいっ。構いません」
恥ずかしさを紛らわそうと、つい上擦った声で返事をしてしまった。
「ありがとう。ではまた、夕食で」
夜宵は目尻を下げて、とても嬉しそうに微笑んだ。
そして、返事をする間もなく夜宵は去って行った。