雪の季節が終わり、まだ朝と夜は冷えるが、段々と暖かい日が増えてきた。

「最近は暖かくていいわねぇ」
「はい。春が近いのを感じます」

午後の昼下がり、文月は咲夜子とお茶をしていた。
本当はもあひとり来る予定なのだが、ひとりは少し遅れると、先程優依が言っていた。

「お茶も美味しくて、文月ちゃんともお話出来て……この上ない至福だわ〜」
「私も、咲夜子様とお話出来て嬉しいです」
「あら。ふふっ。ありがとう」


四半刻ほど、話した頃、襖の向こうから華の声がした。

「文月様。お客様がいらっしゃいました」
「ありがとう。華さん。お通しして」

襖が開き、中に入ってきたのは銀の髪に、碧い瞳の美しいく妖艶な女性。

「ごきげんよう。玉藻様」
「遅れてしまい申し訳ありません。文月様、咲夜子様」
「大丈夫ですよ。さ、こちらに座ってごゆっくりなさってください」
「ありがとうございます」

玉藻が座ると同時に、文月は陶器で作られた汲み出し茶碗にお茶を注いだ。

「どうぞ」
「ありがとうございます」
「玉藻ちゃんも大変ね。子供たちが離してくれなかったのでしょう?」
「ええ……」

玉藻は苦笑をこぼして、お茶をひとくち飲む。

彼女は数年前に結婚をして、二十歳で双子の母となったらしい。

「昨日までは、あの子たちも納得してはったのに、今日になって離れるのが嫌になってしまったようで……。なので、夫に任せて隙を見て来たとです」
「大丈夫なのですか?」
「夫がついとりますし、帰ったら一緒に遊ぶ約束をしてはりますから」

ふふ、と玉藻は柔らかく微笑む。