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「皆、集まったようだな。……今日の話は、他でもない。人間の国の話だ」

周りの空気が、一気に重くなる。

「して、近況報告をお前たちから聞きたい。まずは、烏瓦(からすがわら)

黒髪を結い上げ、簪をつけている少女のように可愛らしい女性──天紀(あまこ)は可憐に微笑む。

「空から見た感じは、特になにもありませんでした。民衆が暴動を起こすような感じもなかったです。恐らく、一条家に仕えていた家臣達が、何らかの手を打っているんでしょう」
「そうか。報告ありがとう。では次に、孤燁(こよう)鬼宮(おにみや)

銀髪に碧い瞳を持つ、妖美な雰囲気を放ち、扇子を広げて微笑む、孤燁玉藻(たまも)
少し紅みがかった黒髪と紅い瞳を持つ、整った顔立ちをしていながら、少し無愛想な表情の、鬼宮羅刹(らせつ)

「人間側は話し合いを望んではります。今回のことで、君主やった一条家を滅ぼされたからでしょうなぁ。まあ、あちら側が冷静に話し合いをしてくるかは別になりますけど」

先に語り出したのは、玉藻だった。

「その話は、こちらにも来た。孤燁の言う通り、人間が冷静に話し合いをする気があるなら、こちらも応じるが……」
「その件ですが、話し合いをする価値はあると思います」

羅刹が、右手を上げて意見を述べる。

「それは何故だ?」
「少し調べてみたところ、人間側の方に若い青年がいました。老人よりも、若者の方がまだ話は通じるのではないでしょうか。手中に落ちていたら話は別ですが……」

羅刹の意見も一理ある。効率的な面では、その方が話を進めやすい。
しかし、その上の者が出ないとなると、それはそれで別の問題が発生してきて面倒なことになる。

「あ、あの……。一条家の末の娘様はどうされるのですか?」

今の今まで、片時も話すことのなかった猫城(ねこしろ)家当主。

翡翠色の瞳、茶色の髪と少しキリッとした目の形と、猫のように可愛らしい容姿を持つ猫城真陽(まお)

彼らには、あらかじめ文月のことは話していた。
君主が決めたことなので、渋々といった感じだったが、一応は了承してくれた。

しかし、実際に文月の姿を見て襲いかからないという確証はなかったため、念の為、文月には部屋をなるべく出ないように言っていた。

──嫁として迎え入れようとしていると話すのは、まだ先だな。

「彼女の処遇は、俺が既に決めている。話し合いに参加させるかは悩むところだな……」
「人間側は一条家の生き残りがいることを知っているのではないでしょうか。恐らく、否が応にも参加させるかと思われます」

真陽の言葉に全員が頷く。
しかし、夜宵はあまり望ましく思えない。

「参加して、強制的に国に返すことになったら面倒だな……」
「何故ですか?」

小さく呟いたつもりが、一番近くにいた羅刹には聞こえていたようだ。

「いや。こっちの話だ。気にしなくていい。彼女を参加させるかどうかは、本人にも意見を聞いてから決める。後日連絡をするからそれまで待っていてくれ」
「「御意」」



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