外に出て、屋敷の庭を見回る。
仲間たちからの連絡で、屋敷のほとんどの人間を捕えることが出来たらしい。
ふと、どこからか視線を感じた。
──殺意、とかではないな。上か。
見上げると、窓越しだったがはっきりと人影が見えた。
「!」
夜の闇でも、月のように光る金色の瞳。
一条家の者である証だ。
夜宵はすぐにその部屋へと向かった。
扉は古く、本当にここに人間がいるのかと疑問に思ったが、見えたのは間違いないので扉を開く。
「動くな!」
そこにいたのは、長い黒髪に美しい金色の瞳を持つ少女だった。
彼女が着ている着物は古く、何度も縫われた跡が多くあった。
本当に一条家の人間か疑ったが、彼女の瞳は本物だ。
──本当にここにいたのか。それとも、生き残ろうとわざとこんなことをしているのか……。
一条家の人間は、外見こそ美しい者ばかりだがその中身はとても醜い。
自分さえ良ければ、他人などどうなってもいい。そういう者ばかりだ。
──使用人を盾にしようとした娘もいたな。
それ以外にも、金で解決しようとする者や一番酷かったのは、当主夫人の命乞いだった。
しかし、目の前にいる少女は命乞いなどせず、使用人を盾にするどころか守っている。
「お前。名前は?」
芯の強い彼女になぜか惹かれた。
夜宵はただ興味が湧いただけだと思い、あやかしの国に連れて行くことにした。
しかしそれだけでは、いつか人間の国に返すことになる。
だから、彼女を嫁として迎える。
使用人として雇うと、周りのあやかしや使用人に気づかれる。
あやかしは、人間比べて五感が鋭い。
そして龍はあやかしの中でも特に五感が研ぎ澄まされている。
なので、他のあやかしに気づかれない為にも、夜宵の手が届く範囲で共にいてもらった方がいい。
──彼女に嫌われていないのなら、の話だけどな。
◇◇◇