がばりと後ろから目隠しをされ戸惑っていると、

「あんっのタヌキ親父! ぜってえ知っていたくせに茉優を寄こすなんて何考えてるんだ! 茉優、電車賃は出すから今すぐ家に戻っていい。あとは俺がひとりでやっておく」

「ちょっ、マオさん落ち着いてください」

「おや、喧嘩ですか?」

「アンタはちょっと黙っててくれ……!」

「マオさん、駄目ですよ声を荒げたら。ご依頼主様の大切な方なんですから。それに」

 私はよいしょとマオの手を引き剥がして、

「私はとっくに立派な大人です。ご心配には及びません」

「なあ……っ!?」

 真っ青な顔で、マオがピキリと固まる。

(え? 私って年齢言ってなかったっけ?)

 いやでも、言っていなかったとしても、どう見ても未成年には見えないだろうし。
 誰が見たって"立派な大人"だと思うのだけれど。

「茉優……本当、なのか。その……とっくに、立派な大人っていうのは」

 あわあわと訊ねてくるマオが、いったい何にそんなに衝撃を受けているのかわからない。
 ひとまず私が大人なのは事実なので「はい」と頷くと、マオは崩れ落ちる用にしてフローリングに両手をつき、

「だが……っ、たとえ茉優がすでに"大人"だったとしても、俺の愛が揺らぐことはない……!」

(……マオさんってもしかして、未成年が好きなタイプだったのかな)

 え、だとしたら必死に探していた"ねね"も、もしかして。
 確かに昔なら、今でいう成人よりも早い年齢で嫁ぐこともあったはずだし……。

「……マオさん。マオさんの性的嗜好に口を出すつもりはありませんが、犯罪にはならないよう注意されたほうがいいかと」

「ん? 待ってくれ、突然なんの話だ?」

「それと、すみません。未成年のうちにお会いできなくて」

「だから茉優、なんの話だ!?」

「ふぐっ」

 妙な音にマオと揃ってベッド上の彼を見遣る。
 と、こらえきれないといった風にお腹と口元に手をなりながらくっくっと笑い、

「大変失礼いたしました。あまりにお二人のやり取りが、可愛らしいもので」

「な!? おま、かんっぜんに馬鹿にしてんだろ……!」

「マオさん、お前ではなく冴羽さんです」

「玄影でいいですよ。冴羽の姓はあまり好きではないので」

 玄影さんは「ああ、面白い」と小さく呟いて、にこりと人の良い笑みを浮かべた。

「今日は退屈しなくて済みそうです。よろしくお願いしますね」