「申し訳ないと思いつつも、茉優が、こうして真面目に考えてくれたことが。それを、俺に話してくれたのが嬉しいんだ。無遠慮に振舞っておきながら、茉優の苦渋の決断を"嬉しい"だなんて。性根が悪いにも程がある。だが俺は、この気持ちを変えられない。だからせめて、罰を受けるべきだ」

「そんな……っ」

(このままじゃ押し問答になるだけ)

 手をぐっと握りしめ、勢いよく立ち上がる。
 マオがビクリと肩を跳ね上げたけれど、気にせずその眼前に立った。

「ま、茉優……?」

 意を決して、その場で膝を折る。そして私はマオの両手に触れて、痛みが引くようにと祈りながら軽く撫でた。
 マオが息を呑んだ音。顔を上げるには恥ずかしさが勝って、私は撫でる手を見つめたまま、「私も、嬉しいです」と告げる。

「私、昔からしょっちゅう考えすぎだって、真面目すぎだって呆れられるんです。冗談が分からないとか。だから、マオさんがこうやって嬉しいって受けとめてくださったのが嬉しいですし、マオさんの性根が悪いだなんて絶対に同意できません。私が出来ないからとマオさんが勝手にマオさんを傷つけるのなら、これからは、ちゃんと嫌なことがあれば私が直接叩きます。なので……私の大事な人を、マオさんが罰さないでください」

(さすがにちょっと、図々しすぎたかな)

 恥ずかしさよりも不安が勝って、ちろりとマオを見上げる。
 と、そこには硬直する、真っ赤な顔。

「あ……」

 つられるようにして、自身の顔も一気に熱をおびるのが分かった。
 マオは「ああ、と。そうだな……」としどろもどろに視線を彷徨わせながら、

「茉優、モノは試しってことで訊きたいんだが」

「は、はいっ!」

「……抱きしめてもいいか?」

「!?」

(マオさんに抱きしめられる!? むりむりむり……っ!)

 そんなことをされたら、この心臓は確実に破裂する……!
 私は急いで自席に戻り、

「せっかくのシフォンケーキが乾いちゃいますよ! 早くいただいちゃいましょう!」

 不自然に食べ始めた私に、マオは「だよなあ」と残念そうに肩を落としていた。