(きゅん!? あ、あーなるほど、これが噂の"萌え"ってやつ……!)

 アイドルを熱心に応援していた後輩ちゃんが語っていた症状を思い起こしながら、初めての体験に嬉しいような恥ずかしいような感覚を堪能していると、

「茉優? ええと……引いたか?」

「いえ! とんでもないです! では、改めさせていただきまして……ありがとうございました、マオさん」

「ん、どういたしまして」

 くすぐったそうに笑むマオがなんだか直視できなくて、私は視線を斜め下に落としながら、「すみません、朝食前に」と席に着くよう促した。
 私達が着席したのを見計らったようにして、世話係として働く女性が朝食を運んで来てくれる。

 温かな真っ白のご飯に、少量のネギを散らした豆腐とわかめの味噌汁。
 焼鮭の切り身の横には黄色の鮮やかな出し巻き卵が並び、さらにはふんわりとした大根おろしが添えられている。
 ほうれん草のお浸しの上には、たっぷりの鰹節が。

(なんて理想的な和朝食……!)

 感謝に手を合わせてありがたくいただきながらも、今日中には離れの掃除も終えなきゃと使命感にかられる。
 早いとこ、"お客様"から脱さなければ。

「やっぱり茉優に頼んで正解だったな」

 唐突な賞賛に、発したマオを見遣る。
 彼は柔らかな卵焼きを箸で半分に切りながら、

「俺達じゃ、茉優のようには解決してやれない」

(沙雪さんたちのことだ)

 そんなこと、と言いかけて、飲み込んだ。
 沙雪さんは"人間"である私に話せたことが、勇気に繋がったのだと言ってくれた。
 それは、あやかしであるマオたちには、どんなに望もうと出来ないこと。

「……少しでも役に立てたのなら、良かったです。けど、私ひとりでは解決出来ませんでした。マオさんが、いてくれたから」

「茉優にそう言ってもらえるのは、嬉しいな。あやかしであってよかったと思ってしまうくらいに」

 マオは味噌汁を嚥下して、ことりと置く。

「茉優は、夫婦になるのなら人間がいいか?」

「え……?」

 問われた内容に、思わず掴んでいた鮭がほろりと皿に落ちる。
 マオは「ああ、いや」と頬を掻いて、