「だって、嘘をつきたいんなら、わざわざこんな"嘘かも"って思えるような話にしないだろ。あやかし……妖怪ってことだよな? 俺は今までお化けすら見たことがないから、ちょっとまだ実感が沸かないけれど……。沙雪がこんなにも泣いて話てくれたんだから、俺はそのまま、受け止める」

「正純さん……」

「先祖がなんだろうと、沙雪は沙雪だってことに変わりないよ。冬でも寒くないとか、ちょっと羨ましいなんて言ったら、気分悪い?」

「菜々……ううん。私もね、寒くないのは楽だなって思うこと多いもの」

 くすくすと笑い合う二人に、正純さんが目元を和らげる。

(うまく和解できたってことで、いいんだよね)

 よかった、と安堵の息を零した刹那、ピンポン、と部屋に呼び鈴が響いた。
 不思議な顔で立ち上がった菜々さんがインターホンを操作すると、

『開けてくれ~~』

『あーけーてー!』

「マオ!? 風斗くん!?」

 気づけばいつの間にか、二人の姿がない。
 上がってきた二人はガチャリとドアを開けて入ってくると、

「その様子だと話はまとまったみたいだな。んじゃ、始めるぞ!」

「はじめるって、なにを」

 戸惑う菜々さんに、風斗くんがビニール袋を抱えながら、

「ママのおたんじょうびパーティー!」

「え……?」

「飾り付けはある、ケーキもある。プレゼントだって揃ってるんだ。なら今すぐ"サプライズパーティー"をしても問題ないだろ? ということで、風斗と一緒にコンビニで適当に買ってきたから、いい感じに並べてくれ」

「菜々ちゃーん、つくえのこれどかしてー」

「え!? あ、うん! って、風斗ちょっと待って乗せないでっ!」

 バタバタと風斗くんに駆け寄った菜々さんが、一緒に飾ろと風斗くんとカーテンに装飾を付け始める。
 マオは「これもな」と唖然としている正純さんにビニール袋を押し付けて、隣で立ちすくむ沙雪さんに視線を向けた。

「風斗はなにも、聞いてないからな」

「!」

「言うも言うわないも、今度は二人で決めればいい。あの子は、キミたち二人の子なのだから」

 虚を突かれたような顔をして、正純さんと沙雪さんが顔を見合わせる。
 それから二人は示し合わせたように深々と頭を下げ、

「そうします。何から何まで、ご迷惑をおかけしました」