「……菜々。机の上の本みたいなものはなに? 表紙が、我が家の三人の写真に見えるのだけれど」

「あ、うん。あれは、アルバムを作ってみたの。写真のデータ、正純さんに貰って……。ほら、家にも写真、飾ってるじゃない? だからデータじゃなくて、手元で見れるアルバムもいいかなって思って……。沙雪は、家族が大好きだから。買ってきたプレゼントよりも、こっちのが嬉しいかなって……思って……」

 刹那、沙雪さんが両手で顔を覆った。
 膝を折るようにして崩れ落ちる。

「沙雪!?」

「ごめんなさい、正純さん、菜々」

「な……どうして沙雪が謝るんだよ! 沙雪は何も悪くないだろ!」

「怒っていいのよ沙雪!」

「違う、違うの……。私が、二人を信じてなかったから。正純さんも菜々も、私を想って、私のために頑張ってくれてたのに……。二人とも、いつだって私を大切にしてくれているのに。なのに勝手に疑って、全部駄目にしてしまった。与えてもらっておいて、こんな酷い裏切り。本当に、ごめんなさい」

 嗚咽を零しながら深々と頭を下げる沙雪さんに、正純さんと菜々さんが即座に駆け寄る。
 悪いのは自分たちだと諭しながらその身体を支える二人に、沙雪さんは俯いたまま、けれどはっきりとした声で「きいて」といった。

「ずっと、二人に隠していたことがあるの。私……ただの、人間じゃないの」

 え、と。沙雪さんに寄り添っていた二人が、困惑に停止する。
 沙雪さんは涙を拭って、二人を見上げた。

「私、あやかしの……雪女の血が、混じっているの。ずっと黙っていてごめんなさい。本当のことを言ったら、気味が悪がられると思って、死ぬまで黙っていようって、思ってたの。二人が大好きだから。けれど二人に嘘をついているのが、だんだん、心苦しくなってきて。……拒絶されたくない、だけど、嘘をついていたくない。そんな風に自分がやましいことを隠し続けているから、二人もきっと、私に嘘をついて隠し事をしているだなんて考えるのよ。裏切っていたのは、自分なのに」

「沙雪……。あやかしって、雪女って……本当の話なの? 沙雪のご両親も、そんなこと一度も……」

「それは私が黙っていてって頼んでいるから。聞けば本当のことを教えてくれるし、家系図も、見たければ見せてあげられるわ」

「……沙雪も、雪女だってこと?」