うまれて初めての尾行作戦。
沙雪さんから教えてもらった会社の自動ドアが開閉するたびにスマホの写真と見比べながら、ターゲットである正純さんが出て来るのを待つ。
万が一、尾行中に怪しまれた時は恋人のふりをするのが一番だろうとマオが言うので、今日は衣裳部屋からネイビーのワンピースを借りてきた。
髪のセットとお化粧はタキさんが。例にもれず、マオは大げさなほど絶賛してくれた。
いまいち落ち着かないけれど、確かにこちらのほうが、街の景観に馴染む気がする。
帰りにデートしていくか! とうきうきしているマオを宥めるのに、少し苦労したけれど。
「正純さんではありませんでしたね……」
「まあ、のんびり待つとしよう。出て来てからが勝負なわけだからな、肝心な時に疲れていては判断が鈍ってしまう」
「そうですね……」
とはいえ帰宅時刻を過ぎた会社とあって、時間が経つにつれて出て来る社員が増えてくる。と、
「マオさん、あれ……っ!」
スマホと見比べる私に、マオが頷く。私も頷き返して、気付かれないよう、そっとその背を追いかけはじめた。
幸い、帰宅中の人達に紛れることが出来たことで、顔を覚えられていない私達は簡単に尾行が出来た。
人波にのって、正純さんが賑わう品川駅に辿り着く。
刹那、駅へ繋がるアーケードからふと逸れた。きょろきょろと周囲を見渡して、片手を上げる。
女性がいた。応えるようにして片手を上げる、オレンジブラウンのセミロング。
仕事上がりのようで、パンツスタイルの恰好は写真でみたそれよりもオフィス街に馴染んでいる。
(菜々さんだ……!)
落ち合った二人は当然のようにして歩き出す。改札を通り過ぎ、アーケードを抜けると、線路に沿って歩を進め駅から離れていく。
無言のまま、緊張に騒ぐ心臓の音だけを感じながら、マオと並んで二人を追う。
二人は特に周囲を気にすることなく、楽し気に言葉を交わしながら路地に向かった。
そして当然のように、マンションに入っていく。
「茉優、こっちだ」
囁きながら、マオが私の腕をひく。
エントランス側とは反対の路地に出て、マンションの並ぶ窓々を見上げる。
「予想では、あの部屋だと思うんだが……」
マオが三階の一室を指さす。
沙雪さんから教えてもらった会社の自動ドアが開閉するたびにスマホの写真と見比べながら、ターゲットである正純さんが出て来るのを待つ。
万が一、尾行中に怪しまれた時は恋人のふりをするのが一番だろうとマオが言うので、今日は衣裳部屋からネイビーのワンピースを借りてきた。
髪のセットとお化粧はタキさんが。例にもれず、マオは大げさなほど絶賛してくれた。
いまいち落ち着かないけれど、確かにこちらのほうが、街の景観に馴染む気がする。
帰りにデートしていくか! とうきうきしているマオを宥めるのに、少し苦労したけれど。
「正純さんではありませんでしたね……」
「まあ、のんびり待つとしよう。出て来てからが勝負なわけだからな、肝心な時に疲れていては判断が鈍ってしまう」
「そうですね……」
とはいえ帰宅時刻を過ぎた会社とあって、時間が経つにつれて出て来る社員が増えてくる。と、
「マオさん、あれ……っ!」
スマホと見比べる私に、マオが頷く。私も頷き返して、気付かれないよう、そっとその背を追いかけはじめた。
幸い、帰宅中の人達に紛れることが出来たことで、顔を覚えられていない私達は簡単に尾行が出来た。
人波にのって、正純さんが賑わう品川駅に辿り着く。
刹那、駅へ繋がるアーケードからふと逸れた。きょろきょろと周囲を見渡して、片手を上げる。
女性がいた。応えるようにして片手を上げる、オレンジブラウンのセミロング。
仕事上がりのようで、パンツスタイルの恰好は写真でみたそれよりもオフィス街に馴染んでいる。
(菜々さんだ……!)
落ち合った二人は当然のようにして歩き出す。改札を通り過ぎ、アーケードを抜けると、線路に沿って歩を進め駅から離れていく。
無言のまま、緊張に騒ぐ心臓の音だけを感じながら、マオと並んで二人を追う。
二人は特に周囲を気にすることなく、楽し気に言葉を交わしながら路地に向かった。
そして当然のように、マンションに入っていく。
「茉優、こっちだ」
囁きながら、マオが私の腕をひく。
エントランス側とは反対の路地に出て、マンションの並ぶ窓々を見上げる。
「予想では、あの部屋だと思うんだが……」
マオが三階の一室を指さす。