「あれは……! その、好きは好きでも好意的……あの、尊敬とか感謝とか、心強いなとかそういった"好き"でして……!」

「……茉優。薄々気づいてはいたんだが、キミ、存外危なっかしくて厄介だな?」

「え……と、以前の職場で後輩に、危なっかしいと言われたことはありますが……」

「それは男か?」

「いえ、女の子です。とてもしっかりしていて、私のことも慕ってくれる、いい子でした」

「……そうかあ」

 どこか遠い目をしているマオさんに、私は「あの、出来るだけご迷惑をおかけしないよう、気を付けます」と低頭する。
 と、マオは「いや」と苦笑して、

「茉優は茉優の思うままでいいさ。これは俺にとっても、いい訓練になるからな」

「そう……ですか」

「ただ、出来ることなら、俺相手だけにしてくれな」

(確かに、お客様相手に危険なことをしたら大問題になっちゃうだろうし)

「心に留めておきます」

 ありがとな、と笑うマオは、やっぱり面倒見がいい。
 子供の相手が上手かったのも、こうした彼の懐の深さが関係しているのかもしれない。

 気づけば鬱々とした気持ちは、すっかり和らいでいて。
 穏やかな横顔を盗み見てから、どうかあの家族が悲しい結末を迎えませんようにと静かに祈った。