ぐるりと部屋を見渡す。
 定期的に掃除はされているのだろう。使われていないにしては、ホコリが少ない。
 けれどやはり空気は長く留まっているように重く、カーテンや、窓だって。私が住めば、もっと手をかけてあげられるだろう。

「こちらをお借りしても、よろしいですか? 皆様が嫌になりましたら、すぐに出ていきますので」

「いいのか? よかった。ここの明かりがまた灯るのを楽しみにしている奴らも多いんだ。茉優に出ていかれないように、俺もちゃんと頑張らないとだな」

(マオさんもお掃除、手伝ってくれるのかな?)

 たしかに一人で掃除するには広すぎて、人手が多いにこしたことはない。
 マンションにそのままにされている私の荷物は、数日中に朱角さんたちが持ちだしてくれると言っていたけれど。

(それまでに出来るだけ綺麗にしておかないと)

 今からでも掃除をはじめていいものか、尋ねようとした、その時。

「ここは気にいってもらえたかな?」

「狸絆さん!」

 いつの間にか、開け放たれたドアの前に立つ狸絆さんが。

 マオが「ここを借りる」と端的に告げると、「そうか」と穏やかに頷いて、私ににこりと笑みを向けた。

「昨日の今日で悪いが、さっそく仕事を頼みたいのだけれど、いいかな」