歳は私よりも少し上の、二十半後半辺りだろうか。
 これまた白の着物の上に、淡い藤色の羽織を重ねている。
 一言でいえば、美しい人。強烈に惹きつける存在感があるのに、触れれば煙のように消えてしまいそうな儚さも纏っている。

(こんな綺麗な人、初めて)

 そう、初めて。そのはずなのに、どうしてこんなにも懐かしさと恋しさが、胸に溢れてくるのだろう。
 口元に微笑みを携えた彼が、私に向かって静かに歩を進めてくる。
 声は出ない。動けもしない。
 立ちすくむ私の眼前で歩を止めた彼はすっと左手の薬指を立て、一帯の花々を震わせるかのごとく輝かしい笑顔を咲かせた。

「やっと、繋がったな」