「茉優を見つけた時、たしかに俺は恋に落ちた。二人で共に夫婦として、幸せを分けあっていけるのだと歓喜に震えた。それはもしかしたら、前世の"マオ"の魂がねねの魂に反応したのかもしれない。だが俺だって、思考もあれば感情もある。いくら前世の魂がねねを求めていようと、俺が関わっているのは茉優なんだ。いつまでも衝動で愛を捧げられるほど、俺は"優しい"男じゃない」

 好きだ、茉優。
 愛し気に瞳を緩めるマオの顔を、淡い暖色が優しく染める。

「人間だろうがあやかしだろうが、誰を相手にしても真摯であろうとする優しさも、自信がないゆえの謙虚さも、かと思えば夢中になると大胆なところだって、全部、俺が知る茉優の一部だ。茉優の優しさにつけこもうとするヤツがいるのなら、俺が阻もう。茉優のことは俺がめいっぱい愛するし、これからもっと沢山の感謝をいろんなヤツから貰っていくだろうから、きっと自信だってつくはずだ。大胆なところはそうだな、もっと俺が近づくことを許してもらえるのなら、俺にとってはありがたいご褒美だ」

 マオはクツクツと喉を鳴らしながら、

「自分の痛みは隠してしまうのに、他人の苦痛には敏感で。うまいものには目を輝かせて感動してくれる。恥ずかしそうにはにかむ顔も、嬉しさからの溢れんばかりの笑顔だって。俺が愛おしく感じるのは、すべて茉優そのものだ。俺が好いているのは、愛を捧げたいと願う相手は、茉優だけなんだ」

「……っ」

「なあ、茉優」

 マオがそっと、私に向かって手を差し出す。

「前に、夫婦となるのなら、共に"夫婦"を築いていくことを許してくれる人とがいいって言っていたよな。俺じゃ、駄目か?」

「!」

「ああいや、今すぐに夫婦になろうとか、婚約しようとか、そうした急いたことではなくてな。言うなれば候補というか。俺を、そういう対象として見てくれないか? 少しでも、俺を好いてくれているのなら。ただの同居人とか、仕事仲間じゃなくて、誰よりも茉優に近い位置でいたい」

 我儘なのはわかっているんだがな、と。マオは柔らかな口調で続ける。