「なんて、強さだっ!!」
「尋常じゃねぇぞ、たった一振りでこれかよ!! お前、いったいなんなんだ?!」
後方にいて、攻撃を免れた男たちが、握った武器をそれぞれ震わせる。
俺は、ふむと少し頷いた。
知らないなら、この機に覚えてもらうのもいい。
なにせ俺は新参者なのだ。
「俺は、ディルック・ラベロ。この町の新しい領主だ」
「り、領主だと!? アクドーとかいう奴の後任か!?」
「そういうことだ。さて、大人しくお縄についてもらおうか。さもないとーー」
「い、いやだ! 臓器だけはご勘弁を!! 分かった、捕まえてくれていいから!! この通りだ!」
連中は膝立ちの状態になる。両手首を合わせて、俺へ突き出してきた。
……もちろん、盗賊連中の臓器なんていらないんだけどね?
ただ、十分な脅しにはなったようだった。
すぐに錬金魔法を用いて、その手足を拘束してやる。
「な、なんだ、これぇ……!? 今の魔法か、見たこともねぇ」
「そんなところだ。でも、盗賊に褒められても嬉しくないな」
俺は、先ほど蹴散らした男たちを含めて、次々に捕縛を繰り返す。
「おぉ、さすが若様! あの人数をこう簡単に倒してしまわれるとは……」
そこへ、声をかけてきたのは老剣士・バルクだ。
剣の達人であり、『気』の使い手である。
彼には、別の場所で同時刻に行われていた取引の場に踏み込んでもらっていたのだ。
「その様子だと、そっちも終わられたんですね?」
「もちろん。若様の期待に応えてこその老兵でござる。
人数も少なかったのでな。襲い掛かってきたものは、全員のしておいたぞ」
「それは頼もしい。さすがです、バルクさん」
「おぉ、なんと光栄なお言葉か! 今ので寿命が10年は伸びそうでござる!」
そんなことで伸びるのなら、何度でも言うのだけどね?
どっちにしても彼は、俺がスキル【古代召喚】で呼び寄せた英霊である。
その身体は、外傷以外では滅びないはずだ。
「して、若様。その坊主は?」
「あぁ、そうだったね。いったん、話を聞こうか」
俺は少年の方へと向き直る。
ありがとう、と彼は俺の足にしがみついてきたのであった。