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辺境の町・ローザスの路地裏にて。
その不穏なやりとりは、繰り広げられていた。

髭面の大男が、子供と会話を交わしているのだ。

「へへっ、ちゃんと盗ってきたよなぁ、クソガキぃ? はよ出せや」
「……ご、ごめんなさい。やっぱり盗みはできなくて……」

「あん、われぇ? ワテが出せ言うとんのは、クソガキからの謝罪やない。高いネックレスや魔石や。
 はよ出せ。出さん言うなら、怖〜い目に合うのはわかっとるやろぉ?」

「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
「謝って済むわけないやろが。クソガキの謝罪なんぞに、1ペルの価値もない。
 お宝を出せん言うなら、そやなぁ……。臓器出せや」

男はニヤニヤ笑いながら、背中に差していた刀を抜く。

「これで、腹ァえぐってやるよぉ!!」

緊急事態を察知した俺は、影から飛び出していった。
刀を抜き、その剣身をまっすぐに男へと向ける。

「これ以上はやめろ、腐れ悪党」


本音を言えば、もう少し奴らの企みを把握したいところだった。
もとより、この路地裏に来たのは、盗品販売の調査をするためだ。

やっと尻尾を掴んで、乗り込んできたところである。

だが、もちろん命には変えられない。少年を守れることの方が大切だろう。

男は、すぐに刀をこちらへ向け直す。

「……あぁん、なんだ、てめぇ?」

ついで、恫喝するように声を荒げ、ガンをつけてきた。

「見ねぇ顔だな、他所もんか? ここがどこだか分かってんのかぁ?」
「ローザスの町の路地裏だろ。それがどうした」
「はんっ、分かってねぇなぁ。ここは盗品街、いわば違法の裏販売所や。
 一般人が来るところやないんや。ひっひ。わかったら、とっとと帰りな? 臓器抉られたくなかったらなぁ……!」

もちろん、引っ込むわけもない。
俺はいっさい怯まず、剣を下ろすこともしないまま、言葉を返す。

「お前こそ、そのこどもを解放しろ。臓器抉られたくないだろ?」

「言ってくれるじゃねぇか、若造。せっかく忠告してやったのに無視たぁ、ひどい奴だぜ。
 お前みたいなヒョロッとした若造が、ワテに勝てる思っとるんか、われ? 殺すぞォ!!」

そのただただ汚い殺意には、まるで躊躇いがなかった。
男は、俺へと突きを見舞ってくる。

そのにやけ顔が、ふっと険しくなったのは、すぐ後のことだ。

「き、消えた!? い、いったいどこにいったんだ……!」
「ラベロ流・月影斬り!!」

俺は、得意の剣技をお見舞いしてやる。

高速の身のこなしにより、相手の背後へと抜け入り、身を低く沈めながらその背中を打ち叩いた。

「ガッァァァ……!」

男が、うつ伏せになって倒れる。
少し加減をしてやるべきだったか……? 白い泡をぶくぶくと吹いていた。

「怪我はないか、少年?」
「う、うん。お兄さん、強いんだね!?」
「まぁこの人が強くなかったとも言うけどね」

俺は肩の上で、とんとんと刀を跳ねさせる。
そこへ、

「てめぇ! この人を誰だと思ってやがる!! この盗品街を任された元締めさまだぞぉ!?」

男の部下らしき輩が、ぞろぞろと現れた。うーん、揃いも揃って物騒だ。

こちらへ刃を向けて、怒りのままに振り付けてくる。
こうなったらば、一気に薙ぎ払うしかない。

「少年。少し離れててくれるか?」

彼をチラッと見て、頷いてくれるのを確認する。
それから、

「ラベロ流・下弦半月斬り!」

俺は、襲いくる敵の足元を一気に払ってやった。
連中が、ものの見事に吹き飛んでいく。
路地裏から、外の小道まで出てしまうものすらいた。

あたりに積まれていた木箱が壊れ、彼らが隠し持っていた宝石などが、道へとばら撒かれる。