目を疑わざるを得ないが、その容姿は完全に龍。

伝説上の生き物とされる、龍そのものだった。宙に悠然と浮きつつげるその姿は、資料などで見た姿形と一致している。 

全身を純白の鱗で覆い、雄大な羽を動かす。立派な髭に厳しい顔つきをしているのだから、間違いない。

その龍が、鉤爪でサーバントの尾をしっかりと掴んでいた。

まるでゴミでも捨てるかの如く、龍は蛇を遠くへ放り投げる。

それから、身体を返してこちらを見た。

「主人よ、いかがする。主人。主人、聞こえておらぬのか」
「な、なに、主人って、もしかして俺のこと……?」

「そりゃそうとも。ディルック・ラベロ様。主が、吾輩を呼んだのだろう?」

……いや、【古代召喚】を使いはしたが。龍を呼んだとは思っていない。

ただ必死になって、とりあえず口にしてみただけだ。
にしても、真正面から見ると、すごい迫力だ。

さきほどの大蛇でさえ、この龍の前では小さく見える。

言葉が喉元から消えてしまった。
それは村人たちも同じらしい。爺やに至っては、気絶してしまっている。

……俺もそうしたいくらいだった。

冷静になろうとしてみても、わけがわからない。
文官として、魔法の知識はある方だが、それらを超越してきている。

龍が喋っているのだ。しかも、明らかに俺を主だと呼ぶ。