クマベア族たちの加勢もあり、『白狼の森』での戦線に目処がついた。
となれば、次に確認すべきは、領民たちのいるテンマの村だった。
シンディー、キャロット、コロロの三人を乗せた白龍はすでに到着しているはずだ。
敵兵が送り込まれていたとして万が一もないだろうが、無事はこの目で確かめないことには分からない。
「兄貴、オレが爆走してやるよっ!!!」
再び赤虎には活躍してもらって、村へと急ぎ引き返す。
浜辺から登る際のそり返るような崖の斜面も、獣王には無関係だ。あっさり飛び越えて、裏手から村へ入る。
待ち受けていた光景は、ほとんどは予想の範疇だった。
「く、くそ! 村に入ることさえできないっ!!」
「しっかりしろ! お前ら、幹部である私が指揮を取った別働隊による奇襲だぞ! なんの成果もなしで戻れば、報酬の金が手に入らん! ここはなんとしても……ぐぁぁっ、なんだ!? 落とし穴!?」
いや、むしろその上を行っていた。
やはり敵襲はあったようだが、その対処はほとんど完璧だ。
敵兵は、正面のクマベア族による警護を迂回し、横の砦から侵入を図ったのだろう。
しかし、まず強固な柵に侵入を阻まれ、さらにはそこへ仕掛けていた罠地に、面白いように惑わされていた。
「く、くそ!! 子爵家出身の私ともあろう者が、ろくに魔法も使えぬ! 変なものばっかりだぞ、ここ!!」
砦の少し上から、苦しむ彼らを見下ろしているのはキャロットだ。
男勝りで、姉御肌なところのある彼女らしい。腕組みをして、仁王立ちになっている。
「あら、ありがとう。敵に言われるのって、最高の褒め言葉よ」
身内以外からの賛辞には、デレデレ対応は鳴りを潜めるらしい。乾き切った声で言って、ポニーテールの髪を結び直す余裕さえ見せていた。
運良く別ルートから切り抜けてきたものにも、安寧はなさそうだ。
「なんだ、こいつら!! 街で名の知れた海賊・『昇り龍』の一団に、妙な能力を使う亜人!? なんだよ、ここは!! 異世界か!?」
元海賊たちがその行く手の右を、クマベア族とデミルシアン族が左を、それぞれ遮る。
決して村への侵入を決して許さぬとばかり、膨らむように並んでいた。
彼らの握る武器は、ドワーフらの作った特製のものだ。うまく使いこなせれば、その力を増幅させる。
「ディルック様に教わった通りの戦法でいくぞ!」
陣形を崩さぬままにして、敵を払い除けていく。


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