アクドーの新領主就任は、ローザスタウンの住民にとって、突然訪れた災害に等しかった。
前領主は、ごく一般的な統治をしていたから、その落差は酷いものである。
本来、領主には幅広い知識や経験が求められる。
それらを用いて、さまざまな政策を立ち上げ、実行へと移していくのだ。しかし、それらを一切持たないアクドーは、止まることなく暴走した。
本来、それを抑えるはずの目付役がいないのが問題だった。
「ゲーテ王の元側近だぞ、僕は! 目付けなど必要ない。辺境地くらいどうにでも支配できるさ」
などと思い上がり、ローザスにつくや幽閉してしまったのだ。
アクドーはその後も、自分に都合のいいものだけに利益を与え、それ以外のものからは搾取を繰り返した。
「僕はもっと領地が欲しい。どうせ辺境地に赴任したんだ。『開拓』するのも面白いと思わないか、てめぇら。あたり全てを僕の領土にするんだ」
恐ろしい統治が、平然と横行する。
「金と珍しいものを独占的に流すことで、商人ギルドを牛耳る権利をいただけるとは……。なんとも最高の領主様だ、アクドー様」
「アクドー様、我ら山賊団を雇用するとは実にお目が高い!」
「この奇術の力、ぞんぶんにお貸ししましょうぅ。このドルトリンにお任せあれぇ」
金や権力に目の眩んだ、信のおけないゴロツキたちが彼のもとに参集していた。
ろくに素性も確認せず、それらを全て抱え込んだアクドーは、大きな力を手にしたと、領主の座で踏ん反り返るのであった。
「馬鹿な奴よ、しょうもない貢物で釣られるとは。まぁいい、ギルドはしたいようにさせてもらうとするかな」
「馬鹿な殿様は大歓迎だぜ、ハッ!」
「全くだ。巣食うには、絶好の寄生先であることよ」

裏で、こんな会話が交わされているものとも知らず。


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