効果は、すぐに感じられた。目を瞑れば、腕輪のついた右腕へ熱の流れができたことをはっきりと意識できる。
 一方で、腕輪に嵌った魔石が強く光っているから間違いなさそうだ。
「……魔力が吸われてるみたいだな」
「えぇ。必要時には、強く握れば発動できる仕様でございます」
 消費した魔力は、暮らしているうちに自然と貯まり回復するものだ。
 使わないでいると、それ以上は留めて置けない。ただこの腕輪があれば、その無駄を防ぐことができそうだ。
「シンディー様には、こちらを。頼まれていたものでございますれば」
「あれ、シンディーはなにか頼んでたんだな?」
「はいっ。ドワーフたちから、ちらりと腕輪を作ることを聞いていましたから、旦那様とお揃いにしてもらったんです♪こっちに同じ効果はありませんが、見た目はそっくりそのままです」
 そそくさと自分ではめて、シンディーは恍惚の表情で腕輪を見つめる。
「あぁ、これが愛の証……! 二人の気持ちが一つである揺るぎない形。わたくし、一生大事にしますね。どう、似合ってるでしょ?」
 彼女は俺ではなく、なぜかドワーフ族長へと尋ねる。
「も、もちろんでさぁ。おらには、二人がとってもお似合いに見えますな」
「嬉しいこと言ってくれますねっ!」
 ドワーフの辿々しい言いぶりからして、どうやらシンディーが言わせたらしい。
 いや、それでいいのかよ……。
 そう思うが、いかにも満足気にシンディーは俺の方へと顔を寄せる。んふふ、と実に嬉しそうだ。ハートが飛んでる錯覚さえ見える。
「ご主人様。アリスちゃんがきても、あくまでお嫁さんはわたくしですよ?」
「……どっちもお嫁さんにしたつもりはないんだけど」
「あぁっ。ディルック様ってば、そんな素気ない態度まで格好いい…………!」
 うん。もうだめだ、こりゃ。手の施しようがない。