お礼の応酬をしたのち、ドワドはさらにいくつか他の道具類も取り出してみせた。

 水の湧き出すグラスも、強い光を放つ灯りも、いつのまにか完成していたらしい。

 それらも、文句なしの出来だ。シンディーが、「ほ~」と感心の声を上げるなか、俺は用意していたチェックシートをもとにそれらを確認する。

 その最後に、とっておきとして出てきたのは、腕輪だった。中央に大きなパープル色の魔石が嵌め込まれている。

「それからご要望にはなかったのですが別途、こんなものを作らせていただきました」
「……これは?」
「ただの腕輪ではなく、魔力を溜めておける腕輪・輪廻の輪にございます。前に領主さまが山で討伐された、岩石ゴーレムの魔石から作りました」

 輪廻の輪。

 それは、久しぶりに目にしたものだった。

 たしか長生きしたゴーレムの魔石からしか作れない、かなり高価なものだったはずだ。
 文官だった頃の給料では、一年分あっても足りない。

「あ、できあがったのですね! 4000年前にも見たことがないものだったので、ずっと気になってたんです」

 シンディーが物珍しそうに手にとって、つぶさに観察し始める。

 これは逆に、古代にはなかったものらしい。

 こうやって4000年前と今との文化が混じり合っていくのも、また面白いものだ。

「どうぞ、お納めください。これほど大きな輪廻の輪、領主様くらい大きな魔力を持つ者でなければ持て余すでしょうから」
「ですね! じゃあ、わたくしが嵌めて差し上げますわ。旦那様の身だしなみですものね」

 今度は否定の隙も与えてもらえなかった。

 シンディーはすかさず俺の手首に触れて、一度唇を寄せたあと、腕輪を嵌める。

 いちいち上目遣いで、なかなか絡めた指を離してくれなかったが、それはともかく。