とはいえ、これまで食べようと考えたこともない食材だ。


 恐る恐る一口食べて、なにか言おうと思ったのだが、その時にはもう二口めを含んでしまっていた。

 止まらなくなるのだ、これが。

「…………これ、さっきの猪料理と食べたら何杯でも食べられそうだな」
「よかったぁ、ディルック様が分かってくれる方で! この村はすごいんだよ。あたし、もう感動しきり! だって、お米が周りにたくさん自生してるなんてすごい! 食材の宝庫!」

 これまでは、水を吸ってしまう悪しき雑草とばかり思っていたが、それは思い違いだったらしい。

 いっそ、振るわない農業問題を一挙に解決してしまえる大逆転の一手である。

 わざわざ無理に解決策を編み出さずとも、最適解はすぐそこに転がっていたのだ。

「お米って、栽培もできるのか?」
「うん。ちゃんと栽培すれば、もっと芯のないホクホクのお米がとれるはずだよ。それに、お酒だって作れる」

 つい、眉間がピクリと反応する。

 王都を離れて以来、久しく口にしていないが、飲めるものなら飲みたい。

 適度に楽しむ程度には好きだった。

 それに、酒は基本的に果実から作るもの。米から作った酒は珍しいだろうから、売り物としてもよさそうだ。

「たくさん水が必要だけど、ある?」
「それなら問題ない。もう確保済みだよ」
「よかった! じゃああとは場所だけどーー」

 普段はともかく、食に関するアリスは頼もしいったらない。

 これで、農業面も大きく進歩しそうだ。