俺はフォークを置いて、俺たちの食べる様子をじっと見ていたアリスに言う。

「君の料理はすごいな。そんな力まであるなんて、他にないスキルだと思うよ」
「そ、その、ディルック様も同じ能力を手にしているはずでは?」

 ……あぁ、そういえばそうだった。

 とはいえ、俺の乏しい調理能力では、ここまで美味い料理は作れない。

「早くみんなにも食べてもらおうか。ありがとう、アリス。ごちそうさま」
「お、お褒めいただきありがとうございます。その言葉だけで、あたし、もう満たされました。長い間待っててよかったぁ」

 アリスは、目を潤ませてこう呟いていた。
 
「すげぇ。うまい、うますぎる、ついどんどん食べてしまう。おかわりはありますか!」
「ドワーフ族始まって以来の味革命だ! 一体なんと喩えようか、この味を。おら、感動がまとまらない!」
「俺たちクマベア族だって、猪は好物だが……こんな食べ方はしたことないぜっ」

 アリスの作った料理は、そりゃあもう大好評だった。

 農作業をしていた村人、建築作業に精を出していたドワーフ族、鍛錬で体を鍛えていたクマベア族。彼らにはそれぞれ休みがてら、舌鼓を打ってもらう。

 みな揃っての大絶賛だった。

 たくさんあった寸胴の中身が、どれも見る間に減っていく。

「ウオォォ!! 力が湧いてきたぜェェ!!」

 食べることで力が溢れるのは魔力を持つ貴族らだけではないらしい。

 クマベア族らは両の拳を握り突き上げ、それを全身で表す。

 いつも以上に、その腕は逞しく膨れていた。

「領主さま! 俺たち、これを作ってくれた方に、どうかお礼がしたいぜ!」

 彼らの気持ちはありがたかったのだが、それは叶えられそうにない。みんなに給仕をしてくれていたシンディーと苦笑いを交わす。

「……あー、あとで伝えておくよ」
「むぅ、そうですか。では、よろしくお願い申し上げます!」