「……おぉ、本当に俺らがやったのか? すげぇぞ、領主様の作戦! こんなにあっさりケルベロスを仕留めたのは初めてだ。これまでならけが人が大量に出ることもあった……」
「すげぇ、これまでは本能のままにやっていたが……そうか、こんな連携があるのか」

クマベア族らが、こんな会話を交わし、そのまま戦闘談義に入る。

そんななか俺は一人、ほっと息をついていた。
戦術を知ってこそいたが、誰かに指導をしたのは初めてのことだ。それといえば、戦闘で誰かを指揮したのもこれが一度めである。

まず、うまくいってよかった。

「領主様! 引き続き登りましょうぞ」
「うん、少し急ごうか。日が暮れないうちには、村へ戻りたい」

その後も魔物に出くわすたび、俺はクマベア族へ戦闘指示を与えた。

さすがに、もともと力のある種族だ。贔屓目抜きにしても、その成長は目を見張るものがあった。

「たしかに、槍の武器はこの方が効率よく扱える……!」
「投擲の精度も上がってきたぜ、間違いねえ」

彼ら自身も、それを実感し始めた頃、俺たちは目的地にたどり着く。

「領主様。間違いない、ここが水源だ!」

思わず、足を止められる美しさだった。

そこに広がっていたのは、中程度の大きさの池だ。その全域が、底まで見通すことのできる透明度である。

問題の原因も、すぐに分かった。

「この大岩が、川へ流れる水を塞いでいたわけか……」

なにか、天候が荒れた時にでも落ちてきたのだろうか。

身体の大きなクマベア族たちを超えるほどの岩が、水を堰き止めていた。
いずれにせよ、これを壊せば問題は解決されそうだ。