中腹までやってきたところ、道を阻んだのは、三つの頭を持つ狼・ケルベロスだ。

たち住まいに風格も感じられ、決して見掛け倒しではなさそうだった。

テンマにやってきた際に出くわしたコボルトと同じ狼型であるが、脚の太さや風格はケタ違いだ。体長も3メートル近くはあるのではないか。

「グオオオオンン!!!!」

それぞれの頭を共鳴させるように、ケルベロスは咆哮をあげる。

前足で地面を蹴り上げて、俺たちの隊へと飛びかかってきた。

思わず剣に手が伸びかけるが、ここは俺が戦うのでは意味がないのだ。

「ケルベロスはかなりの強敵……。だが、ここで逃げるわけにはいかない。領主様、ご指示をください」
「うん、よろしく頼む!」

俺はケルベロスを避けながら山肌を上へと駆け上って、全体が見渡せる場所に位置どる。

「近接部隊はまずは分散して、ケルベロスを囲い込め! そのうえで、投擲部隊は山上に陣取って身を隠すんだ!」

すぐに、作戦を伝えた。
ケルベロスは、頭が三つある分、その視界が広い。
そのため、目の前の戦いに没頭させることでまずは狭めてやるのが有効なのだ。

「やるぞ、てめぇら! クマベア族の意地、見せてやる!」

近接部隊との交戦が始まる。

戦闘用だろう、彼らは腕を太く逞しい野生味溢れるものへ変形させた。

ただし、油断は禁物だ。
いかにクマベア族が屈強といえど、ケルベロスは魔物の中でも、かなりの耐久力を誇る。簡単には、倒れてくれなかった。

しかし、引き付けるという意味ではもう十分だった。

「今だ、投擲!」
ケルベロスめがけて、草陰から大石が投げ込まれる。
「クォォ……!!」

目論見通り、顔や身体にヒットしてくれた。

それにより、怯んだところがさらなる隙だ。

近接部隊のうち、槍を持つものたちが一斉に突き刺しにかかる。と、ケルベロスは倒れこみ、それきり動かなくなった。
無事に討伐は成ったようだ。