「錬金作成!!」

力を振り絞りながら、一方で精度を落とさぬように詠唱を心掛ける。

その両立を必死に心がけながら、体内の魔力と空気中の魔素を反応させ、目的の物を作り上げていく。

「ディル様、本当にすごい……! こんなにすぐここまで使えるようになるなんて! 四千年前だってここまでの技量を持つ人はごく一部でしたよ!?」

生成したのは、例の水が湧き出るグラスを参考にしたもの。

触れると、透き通った綺麗な水が、樽の中に溜まっていくのだ。

「みなさん、とりあえず、これを使ってください。十分じゃないかもしれませんが……」
「いや、十分すぎますって領主様!」
「すげぇ、なんだこの人! 本当に神なのではなかろうか」

村人たちが、樽を囲むように覗き込み、口々に言う。

ちなみに、どうしたって俺は人間でしかない。
そもそも神だったら、追放されてないっての。

「ありがとうな、シンディー。おかげで、ちょっとずつ上手くなってきた実感があるよ」
「ディル様に感謝されるなんて、わたくし、幸せすぎて卒倒しそうです」

赤らむ両頬を抑えて、いやんいやんと首を振るシンディー。

少し、熱を冷ましてやる必要がありそうだ。

俺は彼女のそばを離れて、水の沸く大樽を囲んでいた村人の中から、さきほどの女性に再び尋ねる。

「さっきの湧水を汲む作業は、昔からやってきたんです?」
「はい。でも、昔はもっと湧水が出ていたみたいです。なにがあったのか、最近ではかなり少なくなってしまって……。
 だから、本当にありがとうございます! お礼しか言えないのが、心苦しいくらい感謝してます」

彼女はぺこぺこと、お辞儀を連続で繰り出す。

一方で、俺は少し考え込んでいた。

ふむ。彼女の言葉を信じるなら、もともと湧水は十分にあったということになる。

なにか、水源のある山奥で問題が起きているのだろうか。

調査してみる必要があるかもしれない。