二人で行って、大勢で帰ったのだから、村人たちに驚かれるのも無理はなかった。

多量の荷物と、たくさんの人、普通なら一度に運べるものではないが、そこは伝説的存在である白龍だ。

シンディーっぽく言うなら、「余裕のよい」だった。

「え、お父さん、お母さんっ!!」

開放したものの中には、テンマ村で暮らしていたものも多かった。

この間、妹と二人でコボルトに襲われていた女性の両親も、その中に含まれていたらしい。

奴隷としての買い手がなく、賊たちの召使いをさせられていたそうだ。

「領主様、父と母を本当にありがとうございますっ。私は、一生この恩を忘れませんっ」

その女性は涙ながらに俺の手を握る。首を振って答えながら、少し胸が熱くなった。

「……わ、わ、わ、わたくしより先にディルさまの手を!?」

と、シンディーが妙な対抗心を抱くが、彼女はそれを気にしない。

両親と同じく捕まっていたドワーフやクマベア族にも礼を言って回る。

まるで怖がる様子がなかった。

特殊な状況下ということもあってか、種族間の軋轢も今のところはないらしい。

単に、解放の喜びを分かち合っていた。

俺はその輪に混じらず、冷静になって俯瞰する。人が増えたことは大変喜ぶべきだが、問題もある。

「家、どうしようかなぁ」
「ディル様、ディル様! わたくしがいますよ」

いや、それはいけない。

かなりの人数が帰ってきて、かつ他の種族まで仮とはいえ、この村に留まるのだ。

そんな量の家を錬金なんてすれば、シンディーがまた過労で倒れてしまう。

文官も、側近の職も、かなりの重労働だったが、俺は部下に無理な仕事は強いたくない。

「領主様、それなら任せてくだせぇ! おらたちは、ものづくりはこの身についた職でさぁ」

そこへ話しかけてきたのは、ドワーフの男だ。髭面をにししと緩ませて、

「少しの家くらいなら、日の沈む前までに作ってやりますよ。ちょっとした仮の家さ。どうですか、領主様」
「えっ、そんなことまでできるんですね」
「ははっ、あたぼうさ。おらたちの血には、ものづくりが染み付いてんのよ」

なんと頼もしいのだろう。

ドワーフの彼が手を差し出してくるので、俺は握手を交わして、そうしてくれるよう頼む。