ざっと数ヶ月分くらいはあるかもしれない。小麦や野菜も豊富に蓄えられていた。
そして、それだけではない。

「……まさか攫われた人たち?」
「まぁ! それも、結構な人数がおりますね?」

突き当たりの窪んだ空間には何人もの人が括り付けられていた。
ざっと、二十人近い数だ。

さまざまな者がいて、中には明らかに背の低い小人族・ドワーフや、反対に俺たちより頭三つ分以上も大きい獣人などもいる。

毛深く太い腕や、頭の上の特徴的な丸耳を見るに、クマベア族で違いない。

彼らのような人に似た存在は、総称して「亜人」と呼ばれている。
かなり久しぶりに見る存在だった。
どちらも今では数が減り、人里離れて暮らす種族である。最近では、人との交流もあまりないはず。

「みなさん、今縄と手錠を解きますからお待ちください」

だが、俺の言葉に、

「おぉ、本当か! 助けがくるなんて奇跡だぁ~! 信じられねぇ」
「ありがとう、ありがとうっ。これで村に帰れる!」
「恩に着ますぞぉ、兄貴ぃ!」

この瞬間ばかりは、種族などに関係なく解放を喜び合っていた。

この劣悪な環境のなかで拘束されていたのだ。ろくに食事や睡眠もとれていないにちがいない。

身体は相当疲れているだろうに、みな揃っておいおいと泣き叫ぶ。よほどの悲願だったらしい。

聞けば、さまざまな場所から連れ去られて、ここに放り込まれたらしい。
売られるのを待つ身の者や、下僕として小間使いさせられていた者もいたそう。

全員の拘束をとき終える。
すると、まさかの全員土下座で頭を下げてくる。身体を起こしたドワーフの男が言うには、

「あんたは、おらたちの命の恩人だ。なにか手伝えることがあったら、なんでもしまさぁ!」

とのこと。それに、その場の全員が賛同した。