「わ、ワシは魔法も使えるんだっ! ただオーラがあるだけの雑魚野郎に負けるわけがないっ! これでもくらえ、ファイアカットォ!!」
なかばやけくそになったらしい。男は、剣を振り上げ切り掛かってくる。
しかし、いくら火を纏っていたところでガタガタと震えていたら読みやすいことこのうえない。
俺はあっさりといなしながら、剣に龍の火をまとわせる。
「ラベロ流・星影斬り!」
そして、素早い身のこなしから背中を撃つ斬撃を繰り出した。
そもそも龍の力である強力な魔法に、剣技まで加わればその威力はさらに増す。
ものの数秒の戦闘だった。実際、それで十分だったらしい。
一太刀交えたのち、男が、ばたりと地に伏せる。一瞬で消えた炎が細い煙を上げる。これで賊の始末は終わりらしかった。
思ったよりあっけないな、と思いながら剣を鞘にしまった。
ちゃき、と鍔が鳴ってすぐ、
「か、か、かっこよすぎ!! ディル様ぁ~」
シンディーが飛び出てきた。
いっさいの遠慮なく、肩に手を回してぴとりと頬を寄せてくる。
あやうく受け止めきれずに、よろめくところだった。むしろ、賊たちより手強いかもしれないな、この乙女の勢い。
すごい、すごい、と彼女は勢いよく俺を褒めちぎる。
躊躇いなく、俺の顔を胸に埋めてくるので、どうにか煩悩を打ち払ってそれを逃れた。
「すごいです、やっぱりわたくしの旦那様は強さも一流♪」
「昨日召喚した白龍のおかげだよ、俺の剣技は少し役に立ったくらいで。あと、旦那になった覚えはないんだけど。昨日会ったばかりだろ?」
「えー、そんなことありませんよ! 白龍の力も、ディル様の力のうちですもの。さっきの剣技、わたくし妻として痺れました!」
「つ、妻? 入籍した覚えはないんだけど」
「まあまあ細かいことですよ、あ・な・た♡」
だめだ、もうなにを言っても仕方がなさそうだ。ならば、なにも突っ込むまい。
ある種の諦めをもって俺が目を細めていると、続いて、避難していた村人たちが恐る恐るといったふうに出てくる。