「おぉ、新たな領主様じゃ! 昨日は、この老体めをお助けいただきありがとうございます」
「私たちも、本当助かりました」
見に行けば、ちょうど雑草抜きの最中だった。
その手を止めて、昨日会った二人がこちらへと駆けてくる。その他にも数名、村人がいるようだった。二人が話をしていてくれたのか、みな、こちらへ好意的な挨拶をしてくれた。
俺は気になって、ご老人にひとつ尋ねる。
「すいません、この村には、どれくらい人がいるんです?」
「…………現在ではここにいるもの含めて、20人弱でしょうか」
ふむ、やはりかなり少ない。
ぎりぎりのところで、集落の形を作り保っているといったところだろうか。
俺はメモをとりながら、畑を見やる。
もっとひどいのは、こちらだ。完全に、土地が痩せてしまっている。掘り起こすのも一苦労といった具合に固そうだ。
雑草たちに栄養を持っていかれているのだろう。
村の周りにも、妙な草が大量に生えて、その穂を揺らしていた。
「とりあえず、これ使ってもらいましょ、ディル様! ひとまず作業が楽になるはずですよ!」
「うん、それもそうだな。みなさん、一回この農具を使ってみてもらえませんか」
俺とシンディーがそう、村人たちに手渡したのは、小さな鎌だ。
受け取った老人が、ゆっくりと首をかしげる。