歴史の影に隠れてしまった古代文明を現代の、この領地に再現する。

大きな目標をどんと掲げたはいいが、旗を掲げただけでは、ただの夢物語だ。

まだまだ現実はそう甘くない。

「……いやぁ、何度見ても寂れてるなぁ」

村を改めて見渡して、思わず漏れるのは感嘆のため息だ。

こんな状態のままでは、夢も語れない。領地や領民と共に発展してこその、文明復興であろう。

目標を立てた夜。
俺は、召喚した古代の錬金術師・シンディーとともに、まずは屋敷内にあるさまざまな家具へ魔法をかけていった。

ベッドに、キッチン用具に、浴場まで、隅から隅までだ。
とはいえ、もう倒れるような無理はさせられない。

ある程度のところで切り上げて、ついでに夜這いをかけてくる彼女をなんとか宥めて、今が翌日である。

「さて。言っててもしょうがないな。これ、持っていこうか」
「はいっ、きっと喜ばれますよぉ~! というか喜ばなかったら、わたくしが怒ります。激怒します」
「……いや、そこまでムキにならなくていいっての」

俺はシンディーと、錬金術で作った農具を手にして、村の外れにある畑へと向かう。

これは昨晩、彼女と共に作ったものだ。

まずシンディーに見本を作ってもらい、その後、俺がそれを真似て作るという要領で製作した。

俺は、領主となったのだ。自分の屋敷の修繕もいいが、まずは領民のことも考えるべきだろう。