――その頃、一方。

王城では、一人、あまりの忙しさに悲鳴を上げているものがいた。
アクドー・ヒギンス。

王の側近だったディルック・ラベロを罠にかけ、偽の罪を着せて、城から追い出した張本人である。
その後、彼はディルックが去ったことにより空いていた側近の座に収まっていた。
公爵である親のコネを、全力で利用したのである。

ここまでは、まさしく計画どおりだった。だがしかし、今の状況はどうだ。

「……ありえない。ディルックのカスは、こんな仕事量をこなしていたと言うのか!?」

朝から夜まで、アクドーは忙殺されていた。

仕事が山のように降ってくるのだ。

王との政務相談や、各種打ち合わせ、大量の調べものに、宴会のような付き合いまで。
側近の仕事は幅広く、そして専門的な知識も求められる。

それをディルックは、一手にこなしていたのだ。それも、平然とした顔でにこにこと。
なんの努力もせず親の栄光に縋って生きてきたアクドー一人で、同じレベルの仕事をできるわけがなかった。
疲労困憊した彼は、やがて都合のいい考えに至る。

(ディルックの奴は、きっと適当に処理してサボっていたに違いない! でなければ、こんな仕事量どうしようもない……!)

もちろん、その決めつけは誤っていた。
ディルックは培ってきた確かな知識や判断力で持って、膨大な仕事量でも真摯に効率よく、こなしてきたのだ。