「おぉ、シンディーすごいな……。あまりにすごい」
「だーからー、ディル様がすごいから、こんなことができるんですよ? わたくしは召喚されていなかったら、何もできない身ですから」
俺は「いやいや」と首を振りながら、作り上げられた魔道具を見る。
どうやら、今の時代のものとは、仕組み自体が違っているらしい。
だが、決して超常現象というわけではなさそうだ。
シンディーが作り上げたものをきっちり調べれば、なにか分かるかもしれない。そう探究心に駆られるとともに、ある一つの思いが胸のうちに芽生えてくる。
「…………古代文明、再現できるんじゃ」
それは、大それた欲求かもしれない。
でも、抱かざるをえなかった。
どこまで発展し、どういうわけで滅びてしまったのか。
それすら不明だが、今では考えられない発展を遂げた古代文明。その再現という、学問に身を置いた人間としては、ある種の夢を。
「なーんだ。それくらい、できますよディル様ならば。再現どころか、もっと発展させられます」
「……本当に言ってるか?」
「当たり前ですよ。こんな時の女の子は、嘘をつかないんです! ディル様は選ばれし方です。あなたが選ばれたんですよ、このスキルに。そして、まだまだディル様の召喚を待つものが多くいます」
「…………俺に、できるだろうか」
「はい、なにせわたくしのご主人様ですもの。間違いなく、余裕のよいです」
外れスキルを賜ったとされ、努力で文官となったが追放され、目的を失いかけていた。そんな己の人生が、シンディーの言葉のあとに蘇る。
だが、今ここが転機だ。
ならば、成し遂げて見せよう。およそ現実的だとは思われないだろう、このロマンを。
そのために動くのは、国に仕えるよりむしろ度白いかもしれない。
決意が固まった瞬間だった。
「で、ちなみに『余裕のよい』、ってなに……?」
「うえっ。もしかして、古い言い回しでしたか!?」
そりゃあ四千年前だもの。逆に一周回って新しいまである。
……まぁでも、やはり先に確認した前提は正しそうだ。使う言語などは、基本的に今と変わっていないらしい。