苦々しく残って離れないのは、『外れスキル』が発現してしまった日のことだ。

スキルとは、18の歳に貴族家の血筋なら誰しもに発現する魔法能力を言う。たとえば、『炎属性・剣適性』などが一般的なもので、魔法の属性と適性のある武器や攻撃方法などが示される。

普通これらは血のつながりにより、親から子へと継承される。
俺の実家は、伯爵家であるラベロ家。王の剣として各地の街に派遣され、護衛隊長を任される家である。
実際、兄たちは『炎属性』魔法とさまざまな武器の適性を与えられたのだが…………。

なぜか俺には、属性魔法は一つとして与えられなかった。

唯一付与されたのも、【古代召喚】なる妙な名前のスキル。
付与式を行った神官も、見たことがないものだったと言う。そのため、いっさい使い方もなにも分からなかった。

その後、俺は色々と試行してみたが、詳細はなにも分からず唱えてみても発動すらしない。

つまり『外れスキル』だったのだ。

魔法もスキルも使えないのでは、貴族として王国に貢献できるわけがない。

そう決めつけられた俺は、仕官の話を白紙に戻されてしまった。

しかし、俺はそれでも仕官を諦められなかった。往生際が悪いと言うべきなのかもしれない。

そこから、必死に勉強をはじめた。

歴史、政策、経済といった実用的なものから、美術や音楽といった芸術まで。

ほとんどのものに手をつけ、寝る間も惜しんで学習を続けた。その甲斐あり文官の試験に通り、俺は別口から、王国城に仕える身となったのだ。

その後も努力は惜しんでこなかった。

より国をよくし、人々の生活を作るため。とにかく、必死に仕事に励んだし、新たな知識を得るのも怠らなかった。

それがゲーテ王の目に留まったらしい。
俺の提案し実行した政策がうまくいくことが多かったのもあろう。

文官としては初めて王側近にまで昇格したのが、つい数ヶ月前のことだ。

「……それが、なんで…………」

打ちひしがれて、城門の奥を見ることしかできなくなる俺。

そこへ、ケラケラケラと汚い笑い声が耳をつんざいた。
振り返ってみれば、立派な服身を包んだ一人の男だ。金色の長い髪をかきあげ、汚く笑う。