「まぁまぁ、見ててくださいよ♪ ディル様。それ、錬金作成!」
猫撫で声を発しながら彼女は、ボロ館に手を翳す。詠唱を口にしたのち、
「…………え? なにをやったの」
奇跡が起きていた。
そんなものはないと言われても、そうとしか形容しようがなかった。俺は思わず荷物を地面において、目を瞬く。
なんと、ボロ館が一瞬で生まれ変わっていたのだ。
およそ新築としか思えない見た目に、である。
何度瞬きしてみても、そこにあるのはまだ誰にも使われていないのでは、と思うような館だ。それも細部の装飾まで、施されており、屋根瓦が橙色の光を美しくをはじき返す。
たしかに、さっきまでのボロ館では到底住めないため、どうにかしたいとは思った。
けれど、これは俺の考えていたものの遥か上をいっている。
自称・シーちゃんは、大きな胸を張り出し、腰に手を当てた。
「ふふん、どうでしょう! これが錬金です。錬金の基本は、同等エネルギーの変換。渾身の魔力で、辺りに積んであった木々などをここへ持ってきて組み上げたのです」
「……これ、もしかして古代の魔法…………?」
「古代、あ、そっか。ここ未来ですもんね! そっかぁ、この時代にはない魔法だったかぁ、錬金術!」
「……古代の魔法。ってことは元貴族だったんですか?」
「いえ、魔法なら多かれ少なかれみんな使えましたけど」
こてんと首をひねるシンディー。どうやら今とは魔法事情も違ったらしいが……今はそれよりもだ。
「す、すごすぎるって、これは!」
「あら。もう、ディル様も使えますよ? お揃いですね♡ やん、おそろ♡」
……そうだった、召喚したら俺も使えるようになるんだった。