「今日のお礼があります。もう日も暮れますから後日、この爺めに直させてくださいませ」
「女手ですが、私も手伝います……!」

「ありがとうございます、助かります。でも、まずは自分でなんとかしてみますよ」

そもそも苦しい生活を送っていると思われる彼らに、これらの負担を課せられない。

ひとまずこう余裕の笑顔で答えて、そこで彼らと別れるが。

「つっても、こりゃさすがに寝泊まりもできないぞ」

俺が王都で暮らしてきたから貧相に見える、とかそういう次元ではない。風が来たら吹き飛びそう、火がつけば炭まっしぐら、そんな見た目だ。

……さて、どうしたものか。

俺は腕組みをして、廃墟じみた館に目をやり、思い出した。

そうだ、まだ一回、【古代召喚】を利用できるのだった。
なにが出るかは分からないし、運による部分が大きい。が、だからこそ、かける価値はある。諦めるにはまだ早いというわけだ。

できれば、家を直せるような召喚であってほしい。

「スキル発動! 古代召喚!」

俺は未知の力に願いをかけつつ、さっそく召喚魔法を唱えた。

すると、目前に現れたるは、まばゆすぎる光の塊。煌々と光ったのち、明滅し、やがて薄れていき

「おや、ついに……! わたくしの出番のようですね」

現れたるは、それはそれは美しい女の子だった。

ボブのピンク髪が特徴的な少女の見た目をしている。

見た目的には、10代後半だろうか。
ひらひらとレースのついた白服を召していた。生地の量は多いのだが、肝心の胸元は緩く、フリルのスカートは危険領域をちらつかせる短さである。

その端をつかんで、彼女はちょこんと頭を下げた。

「お初にお目にかかります、ディル様。わたくし、シンディー・キーンと申します。
 召喚いただき、ありがとうございます。召喚いただく日を長らく心待ちにしておりました」
「シンディーさん……?」
「あぁん、可愛くないです、それ! シーちゃんって、呼んでくださいな♡」

夕日を長いまつ毛に乗せて、彼女はぱちんと瞬きを打つ。
手首を合わせて、うふふと笑い、腰をふりふりと振った。
し、シーちゃん……だってら。

「あはは、だめ、だめ、我慢しなきゃ。えっと、いきなりは無理ですよね、すいません。待って待って待って、やっーと会えたので、ちょっと先走っちゃいました。わたくし、錬金術が得意でございます」
「……………れんきん術?」

新手の魔術だろうか。
そんな術、聞いたことがない。

その妙な響きに、俺が首を傾げていると、その美少女は両足を跳ねさせて、俺の隣までやってくる。

……やたら、あざとい動きだ。俺は思わずどきっとさせられ、腰をのけぞった。