「こういったものがあると、アポロは寝つくことができません。シンディー、お返ししてもいいですか」
「な、な!? こんなに可愛いのに!?」
「使い勝手を犠牲にはできないですから。申し訳ありません」

深々とした一礼ののち、アポロはシンディーにお手製のぬいぐるみを差し返す。

しばしぽかーんと放心したのち、シンディーはうるっと瞳をにじませると、猫のぬいぐるみを思いっきり抱きしめた。

「いいですよ、そんなこと言うならこの子はわたくしが連れて帰りますったら帰ります! 今夜は一緒に寝ますもん」
「シンディー。残念だけど、そのぬいぐるみは生きておりませんよ。喋りかけても無駄かと思います。
 そのような思い込みをするとは、やはり一度ヒールをーー」
「受けませんってば〜! もう、ディルさま〜、助けて〜!!」

……また最初に逆戻りときた。
いつもは勢いで相手を圧倒するシンディーも、年上のアポロには敵わないらしい。