「初召喚まで偉く時間がかかったが、吾輩が出た以上、心配は要らん。この程度の魔物は、小物だ。もう主人一人で、あっさり倒せるだろう」
「いや、魔法もろくに使えない俺に倒せるような相手じゃ…………」
「それなら、心配無用だ、主人。今みたところ、主人のスキルは召喚したものの能力を一部、手にできるものらしい。主人からは今、かなりの魔力が溢れておるぞ。それも、歴戦の龍たる吾輩が震え上がるほどのものだ」
「は、はぁ?」
「嘘ではないぞ、主人にそんなしょうもない虚言は吐かないのだ、吾輩は。火の玉なら吐くが」
この状況では微妙な冗談とともに、白龍はふんと息巻く。
「……つまりなんだ、俺も火の玉が吹けると?」
「うむ。それも、吾輩と同じレベルの威力を持った龍火球だ」
半信半疑……というより、常識的に考えてあり得ないことだと思った。
さんざん魔法には憧れたが、一度だって使えた試しがない。
だが、ここはもう信じてみるしかない。
俺は剣に、息を吹きかける。
すると、体の中でゾワっと魔力が動くのが分かった。そして、口からは本当に炎の息吹が出ているではないか。
「うむ、それこそ吾輩の技・龍火球じゃ。むろん、剣自体に直接火をまとわせることもできる」
俺にとっては、初めての感覚だった。
身体の底からうずうずと、なにかエネルギーのようなものが湧き起こってくる。
……これが魔法を使うということか。これが魔力の流れであり、力の源。
火を纏った剣を、思わず見つめてしまう。