第一話:
(どうしてこんなことになったのか……)
血だらけで地面にうずくまるレインは自分の身に起こったことを回想して行く。
勇者養成学校でレインは喝采を浴びている。
ダンジョンでの索敵訓練、剣術、モンスターの知識、薬学など、必須科目で優秀な成績を収める。
卒業の日、卒業生がホールに集められ、一人ずつ怪しげな壺の前で儀式を行う。
ハンフリー、ルーシーを始めとする卒業生に様々なスキルが付与される中、最後にレインが登場する。
レインのスキル名「こそだて」が読み上げられ、ホールが静寂に包まれる。次の瞬間、どっと笑いが溢れる。レインは自分が外れスキルを付与されたことに気がつく。
五年後、レインはサーヤと共に故郷の村で子供に囲まれていた。
そこに明らかに柄の悪いハンフリーがやってくる。
第二話:
ハンフリーは街の酒場にレインを呼び出した。大勢の前で勇者を廃業したレインをからかい、嘲るが、レインは意に介さない。
レインの態度が気に食わないハンフリーはスキルを使って勝負を挑むが、簡単にあしらわれる。
怒りの衝動を抑えられないハンフリーはスキルを暴走させ、酒場を焼き尽くす。恥をかいたことをもみ消すために村ごと消すつもりだ。
レインはハンフリーを止めようと埃を被った剣で善戦するが返り討ちに遭い、重傷を負う。
村を蹂躙するハンフリーを血走った目で睨むレイン。外れスキルを付与されてから勇者を諦めるまでの出来事が走馬灯のよう思い出される。スキルを侮られ、嘲笑される、手のひら返されコケにされた屈辱をすべて思い出す。
レインのスキル名が「こそだて」から「蠱育て」に変容する。
第三話:
レインが突如叫び出す。背中から芋虫に似た蠱が浮き出てくる。
蠱はドス黒いオーラを放ちながら、ハンフリーを吹き飛ばす。芋虫の背が割れ羽の生えた美少女が現れ空に旅立って行く。
レインは薄れて行く意識の中で、妻子の無事を思った。
レインが目覚めると、傍らにはルーシーがいた。ルーシーはレインの妻子を含めた村人は皆繭に包まれており、救命不可能なことを伝える。
レインはルーシーに蠱の行方を聞いたが、ルーシーは分からないと首を振る。蠱がスキルを擬態していたと推測したルーシーはその狡猾さから危険性が高いと考え、すぐに討伐する必要があると判断する。
蠱育てのスキルを付与された宿主としての責任を果たすため、レインは一緒に行くと宣言する。
怪我が回復し旅支度を終えたレインはルーシーと旅に出るのであった。