今日は始まり月曜日。
「……なあ。あんたの願いは、来世で、なんじゃなかったのか?」
「あはは……そう思ってたんだけどね? 最後の最後、欲張っちゃったみたい」
「何だそれ。……、変な奴」

 最期の瞬間、雨音に紛れて届かないと思っていた、本当の願い。

『夜とまだ、一緒に居たい』

 そんな願いが叶ったわたしは、天国や地獄には行かず、かといって死神仲間になる訳でもなく、この『わたしが死ぬまでの一週間』を繰り返すことになった。

 変わらない雨空、変わらない世界、変わらない死へのカウントダウン。
 ひとつ違うのは、一日目からわたしは愛しい夜を知っていると言うこと。

 今のわたしは世界にとってイレギュラー。死神である彼にとっても、予想外の出来事だったらしい。

「ねえ、もう一回名前呼んでよ」
「なんで」
「……何となく?」
「却下」
「けちー! あ、死神界? への報告終わった?」
「嗚呼、さっき終わった。とりあえず、またあんたの傍で過ごしてみる」
「やった! ……ね、今日は何しよっか?」
「……しりとりも早口言葉もやらないからな」
「えー?」

 死の間際になって、生まれて初めて誰かに告げたわたしの願いは、やっぱり我が儘だったのかもしれない。
 誰かと……否。好きな人と居たいなんて、そんな子供じみた願い。

「……ねえ、夜」
「ん?」
「今日は、お家デートしよっか」
「!?」

 それでも、諦めることを諦めたわたしは、また最期の瞬間に願って、きっと何度でも繰り返してしまうのだろう。

「な、んだそれ……」
「えー、ダメ?」
「……、……仕方ないな。それが、雨の願いなら」

 わざとらしくやれやれといった顔をしながらも、律儀に付き合ってくれる優しく愛しい死神と一緒に。
 この世界一幸せな、雨の一週間を。