◯第一話:
スーツ姿で病院の廊下を走る暁純。
病室には青白い顔をした妻の莉珠が寝ていた。
莉珠の顔を見て暁純は泣き崩れた。
病室に来る前に診察室で医者から余命を聞いた暁純は、眠る莉珠の手をそっと握り叫んだ。
「お願いだ。誰か俺に莉珠を救う力をくれ!!」
泣きながら眠る暁純の夢の中で、莉珠との思い出が振り返られていく。初対面、初恋の芽生え。莉珠の元へ通う幼い暁純。緊張で死ぬかと思った結婚式……。
エアコンの風とは異なる不規則な風の流れを感じ、目覚める暁純。目の前には見たことのない植物が広がる森だった。
戸惑う暁純を怪奇鳥の群れが襲う。
死を覚悟した暁純をひとりの老婆が助ける。
◯第二話:
異世界から転移した暁純達を老婆は村はずれの空き家に案内した。
安心したのも束の間、莉珠の呼吸が激しく乱れて行く。点滴も薬もなく、暁純は取り乱す。
しかし、老婆は莉珠の症状を見るやいなや、粥を作り持ってきた。
「早くこれを食べさせなさい」
老婆の勢いに負け、半信半疑で莉珠に粥を食べさせる暁純。
食べさせて数分後、莉珠の症状が収まる。
暁純は老婆に粥の中身について訊ねる。
粥の中には老婆特製の怪奇鳥の出汁が入っていた。怪奇鳥の硬い肉には強心剤のような効果があるため、煮出して食べさせると弱っている心臓に効くのだという。
暁純は閃いた。
異世界産の食べ物を食べさせれば、莉珠の身体が治るのではないかと。
暁純は老婆に土下座して弟子にして欲しいと請うのだった。
◯第三話:
目覚めたら莉珠は病室ではない場所で寝ていることに驚く。
暁純から異世界転移したことを聞かされると戸惑いつつも現実を受け入れる。
暁純は莉珠が寝ている間に老婆に教わったはじめての料理、不死鳥の卵粥を持ってくる。
見知らぬ食べ物を目の前に出され、顔をひくつかせる莉珠。しかし、美味しそうな匂いには抗えずスプーンを口に運ぶ。
「おいし〜い!!あきちゃん天才!!」
莉珠の褒め言葉にまんざらでもない暁純。
莉珠の食事を終えると、自分の決意を伝える。
「ここで莉珠の身体を治そう」
暁純は異世界の食材の不思議な力を莉珠に話した。
こうして、二人は異世界の食材をまるっと食べて健康になることを誓うのだった。