代わりに、私の頭にぽん、と大きな手が乗った。

「夏美、知ってるだろ。俺は簡単に好きとか言う人間じゃない」

心臓の音で慶介の声がかき消されそうだ。うん、知ってる。いつも無愛想で、ろくにお礼も言わない男だから。


「じゃあ私も、本当のこと言うけど」

暑さにやられたアイスクリームは、もう形をなくしてしまっているけれど、美しくないなんてもう思わなかった。

アイスリームは夏から熱を奪って、溶けたあとには確かな甘さを残してくれるのだ。


「夏好きじゃないっていうのね、嘘」


だから──もう少しだけ、終わらないで、夏。


【 完 】