私も同じになればいいのに。慶介が嫌いなものは嫌いでありたい。他に寄り添う方法がわからないから。

私だって夏がきらいだ。頭に文字を浮かべて輪郭をなぞる。慶介がきらいな、夏なんか──。

「夏、早く終わればいい、まじで」
「……、めっちゃわかる」
「まーでも、今日はいーや。このまんまで」

はっと胸を突かれる。

「暑いのも悪いことばっかじゃない」

青いハンカチがゆっくりと離れて、いって。

「夏美がいれば、ちょっとはマシ」

顔をあげた先で、切れ長の瞳がすうっと細められた。


「あのさ俺、最近気づいた。“好き”って、嫌い、に勝つ……んだよね」


1秒、2秒、3秒後。私を映した瞳が、ゆっくりと斜めに逸らされる。