──体温調節が上手くできなくなったのは、6年前の夏。後天的なものらしい。


“ おれの交感神経、ぶっ壊れてるからね ”

1年前、木陰で体育を見学していたときに、隣に座っていた慶介がなんでもないことのように教えてくれた。
どれだけ暑くても、体温を下げるための汗をかけない体なんだと。調節ができないせいで、熱が篭りすぎると体の大事な気管がやられてしまうらしい。


言えるわけがない。

慶介が殺したいくらい嫌いな夏。好きなんて感情を抱く自分が憎く思えてくる。

机の上、目の前の、ぐちゃくちゃに溶けたアイスみたいだ。夏なのに、全然、美しくない。


「……私も、夏は好きじゃない、」